持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想143 千と千尋の神隠し

千と千尋の神隠し [DVD]

2001年ジブリ作品。監督、脚本宮﨑駿。原作はありませんが、柏葉幸子の「霧のむこうのふしぎな町」が元ネタになっている部分がたくさんあります。少女がふしぎな世界に迷い込み、そこでは働かねばならず、怖いお婆さんがいて、働くことで少女が成長する。それくらいですけど、でもエッセンスはありますね。あと「クラバート」。これはドイツのプロイスラー原作のファンタジーで、湯婆婆が鳥になるところや魔法使いの弟子をやめられないところ、弟子をやめるにはたくさんの人が変身した動物の中から目的の人物を探さねばならないところ。

 

あらすじ

10歳の千尋は両親と無人の町へ迷い込む。両親は千尋が止めても聞かず勝手に食べ物を食べ豚に変えられてしまう。魔法使いの少年ハクに助けられた千尋八百万の神が疲れを癒す湯屋で働くことに。湯屋の主で魔女の湯婆婆に名前を奪われた千と名を変えた千尋は働きながら両親を助けようとする。

 

感想

124分なのでジブリ映画としては長いのかな?でも長さを全く感じさせないです。こんなことわたしが言うのもお恥ずかしいですが一切無駄がない。全てのシーン、全てのカット、全てのセリフに意味があります。映画とは時間の芸術である、と私シナリオ習ってた時に言われたんですけどまさにそれ!

散々みんなこの映画について語っているので繰り返しを避けますが、避けちゃうと何も言うことないんですけど、まずカオナシ、いいですよね。このキャラクター。怖い。でも悲しい。そしてちょっと可愛いんですよ。一応この映画の悪役なんです。油屋の従業員3人食べてるんで。でもカオナシって不思議で、千尋が主人公だからって言うのもあるんですが「悪だから倒さねばならない」っていう相手じゃないんですね。ひょっとしたら主人公が違ったら殺していたかもしれないけれど、こういう欲望と寂しさの具現化みたいな人、物理攻撃じゃ倒せないだろう。千尋に砂金を出したのに拒否られたカオナシの「いやだ」「さみしい」「千欲しい、千欲しい」って言うセリフ、怖いけれどさみしい、悲しいセリフです。

ハクって実はそんなに千尋を助けてないですし、千尋が油屋でガンガンに働き出してからは出て来なくなっちゃうんですけど、最初の出会い、なんか丸いの食べさせて魔法で立たせてくれるの、釜爺を探せの助言、その後の「ハク様と呼べ」のツン、そしておにぎりのデレ、と的確に印象に残る優しさを出してくるので後半千尋がハクのためにめちゃくちゃ勇気出して頑張っても違和感ないんですよ。登場人物の動機に疑問が湧かない。脚本がうまいんですよ。うまい〜! 絵は当然めちゃくちゃ綺麗。音楽も最高。言うまでもないですね〜。

そしてこの映画で印象的なのは水ですね。水が非常に印象的に使われる。流水が汚れを洗い流し、浄化し、汚れたもの、悪いものの中には汚れた汚い水が溜まっている。 あとあれですね、この映画、異界と我々の世界との境界がよく出てくる。まずトンネル、川、橋。全部異界との境界だったり、異界とこちらをつなぐものだったりします。書いてると無限なのであれですけど、悪いものとかあちらものって川を渡れなかったりするんですよ。あとあれもそうですね。エレベーター。湯婆婆の部屋、最上階でしょう?あれ、経営者だから当然なんですけど、エレベーターって空間を縦に貫いているので、あれも異界との道なんですよね。下の方はバックヤード、釜爺なんかが働いてるところですね。それからお客さんがお風呂に入っていたり宴会をしている表の騒がしく華やかな油屋があって、そして最上階は豪華で静かな湯婆婆ハウス。全く雰囲気が違います。 この映画は行きて帰りし物語ですけど物語内でも沢山行き来しているの面白いですね。

私のジブリ好きな映画ランキング1位はこれかな。2位がラピュタ

 

ファンタジー映画感想142 ザ・シーカー 光の六つのしるし

ザ・シーカー 光の六つのしるし (字幕版)

2007年アメリカ映画。公開時は「光の六つのしるし」というタイトルでした。原作はスーザン・クーパーの「闇の戦い」シリーズの一作目。原題は「The Dark is Rising」と言うシリーズです。これ、アーサー王伝説ベースにしてるんですよ。

 

あらすじ

英国に越してきたウィルは14歳の誕生日、自分は闇の支配から世界を守る光の一員、古老だと告げられる。闇の力が大きくなる五日後までに光の力を秘めたしるし、異なる時代に散らばる木、青銅、鉄、水、火、石の六つの印を探すように言われる。ウィルは力を尽くすが闇の手の者も迫ってくる。

 

感想

これ、原作好きで実家と今住んでいる家と両方にシリーズ揃ってるんですが揃ってくるくせにあまり読まないからどこが原作と違うとかはっきり言えないんです。面目ない。でも大筋一緒です。結構違いますけど。どっちだ?結構違いますね。まず、原作ではスタントン一家生粋のイギリス人ですし、お父さんの仕事も違うし、お兄さんの役割も違うし、結構キーキャラクターだった「宿なし」カットされてるし。でも改悪と呼ぶほどのことはないと思います。基本は同じですから。

 

古老の一人だと知らされた選ばれし者、ウィルが光の六つのしるしを探すために時を超えます。一方、実際に彼の過ごす時、現在は力を増す闇の影響を受けてどんどん暗くなっていきます。具体的には大寒波が来るんですよ。最初は雪だ!くらいの感じだったのが寒すぎて車もこれないし食料もなくなりかけるし、燃料も減って暖も取れなくなる。そういう命の危機が迫るほどの寒さが押し寄せてくるのです。怖いでしょ?

この話もファンタジーの常道である、大きな二つの勢力の戦い、光と闇の戦い、善と悪との戦いがメイン。ウィルは光の側ですね。仲間の古老が他にもいるんですが、これがこの作品、ちょっと変わっているのは光の仲間が町にいる一見そうとは見えない人たちである点。若くも美しくも強そうでもないんです。ミス・グレイソーンは村の大きなお屋敷に住むお金持ちの老女、魔術師マーリンであるところのメリマンは表向きミス・グレイソーンの執事です。他にも何人かメンバーいるんですけどみんなパッと見ただけでは特別だとわからない人ばかり。

そして同様に闇の者も村に普通にいるんですね。騎手はお医者さんだし、マギーはウィルと同じ学校の美人な女の子。そして闇はウィルの兄も誘惑して闇の手先にしてしまう。

それぞれのしるしを一つずつ過去に戻って探すのですが、1時間38分でそれをやるとどうしても単調になるんですね。テンポ感も悪くなってしまうから一つ一つもあっさり見つかる。水が石段を這い上がってお屋敷に入ってくるシーンとかいかにも寒そうな雪の様子とか予算のない映画ではないと思うのですが、小説的な描写でなんとかなるシーンが映画だとあっけなく見えてしまうせいでなんか物足りない感じになっていたかな。まぁそもそもこの光の六つのしるしって何?って話なんですけど、全部集めると光の側、ウィルたち古老にとっていいアイテムだよ〜って感じですね。正直はっきりしない。

オリジナルのショッピングモールの万引き疑惑のシーン必要だったかな〜という感じもある。ウィル役の俳優さんは悪くないんだけどすごく良くもなかったし、美術もちょっと。蛇のシーンとかモンスターもないわけではないのですが、これは蛇は1匹だし小さいし、周りでニョロニョロしているだけなのであまり脅威になっていないんですよね。難しい。原作好きなのであまり悪く言いたくはないんですけど、可もなく不可もなくと言う感じかな。お父さんの職業を大学教授に変えた理由よくわかんなかったな。この話だとそこまでアーサー王感ないです。 お気に入りのシーンは大寒波でミス・グレイソーンのお家に村人が避難するシーン。

魔女は何故3人なのか?

今ディズニーの「ホーカスポーカス」と言う映画を見ているんですが、これに出てくる魔女が3姉妹なんですよね。ウィニー、メアリー、サラの3姉妹。

「スターダスト」の出てくる魔女も3人でした。ラミア、エンピューザ、モルモ。

で、思ったわけです。「魔女ってよく3人で出てこない?何で?」と。

 

これ、たぶんシェイクスピアの「マクベス」でしょうね。冒頭出てくる魔女3人、綺麗は汚い、汚いは綺麗、でしたっけ?あの魔女のイメージが強烈すぎるのできっと創作物で魔女を出そうと考えると人はつい3人にしてしまうのでしょう。一人だけで出てくることもありますが、4姉妹とか5人姉妹とかあまり見かけなくないですか?

 

他に3人1組の女性というと私が思いつくのはMoiraiですね。運命の三女神。紡ぐものクロト、分け与えるものラケシス、そして変えられないものアトロポス。運命の糸をクロトが紡いでラケシスが割り当て、アトロポスが死の瞬間に断ち切るわけです。女神ですけどなんか魔女っぽいですよね。

モイライはギリシャ神話ですけど北欧神話も三女神ですよね、運命は。ウルズ、ベルザンディ、スクルド。それぞれ過去、現在、未来を担当してます。ユグドラシルあるじゃないですか。あの木の三つの根がそれぞれ過去、現在、未来なんですけど、それを竜がかじっているので枯れないように泉の水を変えてやっているらしいです。ギリシャ神話の3姉妹と同じでこの3人まとめてノルンの三女神は人間の寿命とか幸不幸を決めるそうです。

 

あと三姉妹というとメデューサかなぁ。ゴルゴーン3姉妹。ステンノー、エウリュアレー、そして末っ子のメデューサですね。メデューサはめちゃくちゃ有名で、目が合えば石化、髪は毒蛇です。なんかギリシャ神話3姉妹多いですね。グライアイって3姉妹もいませんでした?みんなで歯と目を貸し借りしてる3姉妹。

 

 

しかし、よくよく考えてみると魔女に限らず人間は3という数字が好きです。グリム童話の兄弟や大抵3人兄弟ですし、子豚は三匹だし、父と子と精霊だし三位一体だし。志望校も大抵第三志望まで書かされる。

 

とりあえずはマクベス由来ってことでよろしいんでしょうか。ちょっとよくわからないなぁ。

ファンタジー映画感想141 キング・アーサー

キング・アーサー(字幕版)

2017年。ガイ・リッチー監督の映画です。これ6部作になる予定だったって聞きましたけど大赤字を出してこれっきりになったみたいですね。その当時で最大の赤字を出したらしいです。「だろうよ」という感じの映画だったのでそれをこれから書いていきます。

 

あらすじ

ユーサー王は弟のヴォーティガンの反乱で殺される。逃れたアーサーはスラムの売春宿で育つ。ヴォーティガンは石になったユーサーの体に刺さったエクスカリバーを抜いた者が正当な王、アーサーであるとして年頃の男に剣を試させていた。抜いてしまったアーサーは反乱軍に加わることに。

 

感想

あんまりよくなかったですね〜ガイ・リッチー監督は好きなんですけど。実写のアラジンとかロバート・ダウニーJrのホームズとかね。ジュード・ロウが好きな監督さんなのかな。今回もヴォーティガンはジュード・ロウでした。ちなみに肝心のアーサーはチャーリー・ハナム!ゲースロのベイリッシュ公のエイダン・ギレンが反乱軍の貴族で弓の名手、脱獄名人の役で出てたんですけどもう悪い奴なんじゃねーの?という疑いが止まらなかった。 ガイ・リッチーらしい映画ではあったんですよ。スタイリッシュでスピード感があって、時間を切り刻んでリズミカルに並べることで煩わしい説明をしないところとか。

でも色々このアーサー王伝説というテーマではよろしくなかったですね〜。まず、チャーリー・ハナムが王に見えない。売春宿の用心棒に見える。まぁそうなんですけど、物語が進行しても王には見えない。もうちょっと賢そうな役者さんにやってほしかったな。それか美青年。ランスロットでないんだし。

まずエクスカリバーが完全なる魔法のアイテムなんですよね。エクスカリバーを振るった時の効果やばいので見てください。

それからモルドレッドの魔法がやべーんですよ。王の帰還でハラドが連れてきた巨大な象いたじゃないですか、あの20倍くらいの大きさのやつが背中にピラミッド乗せて攻めてくる。やばいでしょ?キャメロット城大ピンチ。でもモルドレッドはさっと死んで、すぐヴォーティガンの裏切り。ヴォーティガンは愛する人の命を代償に湖の地下の怪物に魔法で協力を得てるんです。この怪物の造形は良かった気がします。綺麗なのと年寄りなのと何人かの女、それとタコの合わさったような怪物。外国の人、タコ不気味がりますからいいんじゃないかな。

魔法も良かったと思います。ゲースロで狼潜りって術あったじゃないですか、あれをこの世界のメイジ(魔術師)も使います。あれかっこいいですよね。なんか魔術辞典みたいなの読んでたら出てきたので、ゲースロのオリジナルというわけでもない。

あれもこれも良かったって言ってるんですけど、何がよくなかったまとめますとね、①ガイ・リッチー節にこだわりすぎてわかりにくい、②ガイ・リッチー節にこだわりすぎてキャラが元の伝説の人物に見えない、③いろんなアクションとか枝葉の登場人物のエピソードを盛り込んで長くしているけれど話として大した話じゃない、④(ファンタジー好きなのにこんなこと言って申し訳ないけど)アーサー王伝説にしてはファンタジーが荒唐無稽すぎる。

特に④では修行のシーンがもうお金かけてるけど安いファンタジーみたいだった。別にいいんですよ、ああいう演出も。でもあれやりたいならアーサー王伝説じゃなくもっと新しいファンタジー小説を材にとれば良かったと思う。

女と子供を人質に取られてアーサーがヴォーティガンの元へいくシーン、蛇が出てきて大暴れするんですけど大きすぎるんですよ。ファンタジーにしても適切な大きさってあるんだな、ということがわかりました。

あと最後ジュード・ロウが謎の悪魔戦士に変身しちゃうんですけど、マジで意味がわからなかった。何?なんで変身したの?より闇に落ちたよアピール?要らなかったと思うけどな〜〜〜。

そして最後までバイキングの下りいらなかった気がしますね。というか全体にアーサーの売春宿の生活に時間割きすぎですね。金貯めてた演出も何を目的として貯めていたのか最後まで説明なかったからあれにあんなに時間割く必要あった?ってなる。ガイ・リッチー独特のテンポと音楽に乗せて印象的にアーサーがお金を貯めているのをアーサーの人物紹介の最初にやってたから意味あるのかと思ってたけど別にねーし。何?ってなります。

とりあえずあんまりいいアーサー王映画ではなかったし、ガイ・リッチーの代表作にもなれない感じでした。お金はかけてたし貧乏くさいな、とか映画として成立してないなってレベルではなかったですけども。

ファンタジー映画感想140 ドラゴン・キングダム 光の騎士団と暗黒の王

ドラゴン・キングダム 光の騎士団と暗黒の王(字幕版)

2018年。ナルニアとかラピュタとかお金がかかっていたり一流だったりするファンタジーばかりを見ていると体が欲するんですよ、B級ファンタジーを。これはその欲望を満たしてくれました。これこれ!こういうの定期的に見たい!

 

あらすじ

王子はゾンビを使って西の城を襲撃。ドラゴンの卵を持った王女は騎士のジョージとその友達、女戦士二人を連れて北の城にいる父王に知らせを届けに行く。途中ドラゴンが現れジョージ卿はあっさり卵を返却。ゾンビに行手を阻まれた一行は暗黒の王国を通ることに。行政委員が王女達の後を追う。

 

 

感想

この映画、2なんですよね。一作目はドラゴン・ウォーズというそうです。いきなり前回までのあらすじが始まってびっくりさせられる。架空の地名やキャラ名が並べ立てられ慌てたけれど見てれば大体飲み込めます。何しろこの手の映画ってそんなオリジナリティあることはないので大体予想がつくわけです。

言いたいことは色々あるんですけど、まず季節感が謎。女戦士は足と腕丸出しの服で、でも毛皮があって、でもまぁB級ファンタジーにはよくお色気担当のやたら露出の高い防御力ゼロのこんな戦士いるわけねーだろファッションの女戦士いるんでこれは仕方ない。でも王女は毛皮のついた冬服みたいなの着てるのにジョージ卿(頭に傷あるスキンヘッド、私は傷があるので元罪人か映画の1で敵だったのが仲間になった人かと思っていたらどうもそういうわけではなさそうでびっくりしました)はシャツ一枚で鎧もなし、ジョージ卿のお友達で騎士らしい愉快な男性(彼がこのパーティーのお笑い担当)は腕剥き出しの革鎧なんですよ。何?寒いの?暑いの?春なの? そして衣装の謎問題としては「王女お召かえを。小屋で(彼らは無人の村で一夜の宿を取ります)見つけた服に着替えてください。その服では目立ちます」とジョージ卿がいうんですが、ようやくまともなこと言ってくれたな〜その服じゃ冒険に適さないよ〜と思ってたんです。ところが着替えた服が白いひらひらのロングドレスでベルトが現代っぽい。目立つし動きにくいし平民に見えないし何???笑ってしまいました。作り手の女の子にはエロい服、お姫様はロングドレスで腕出した清楚風のちょこっとエロい服を着てほしいという思いが優先されて理屈が無視されてるんですよ。ありがちだけどウケる。最後の方、暗黒の王に捕まって王女はより奴隷感のあるセクシーな衣装になります。そしてアマゾネス連中のメイクが突然変わるんですよね。そのままだとエキゾチック感が足りないってことになったのかな。そういうの最初に決めてからやってくれ。

ドラゴンのデザインは、謎の角、あり得ないほど鮮やかなグリーン、ですね。ドラクエ11とかの表のラスボスみたいな見た目です。目つきもそんな感じ。それを紙粘土で表現したような質感のCGなんですよ。でも多少はお金をかけたのかドラゴン複数出てきますし、まぁ頑張ったんじゃないかな。暗黒の王国のモンスターは雑魚連中はみんなでバケツで普通の服を染めたのかな?って感じで非常に木綿感がありました。ちょっと強い敵も服感が強い衣装着てる。この映画、戦闘シーンの効果音は割とちゃんとしたものを入れているので普通の人を殴ったり刺したりしてるみたいでちょっと心配になりました。後時代がはっきりしないんですよね。北の城、外観で使われる映像がノイシュバンシュタイン城じゃないかと思うんですけど、まぁそれはいいとして、中の借りてる場所のお城結構後の方の時代のお城だと思うんですよ。壁の感じやステンドグラスの精密さから察するに。でもテーブルは適切な時代のものを手配できなかったのか山小屋のテーブル?みたいな汚い木の小さな机を王子も王も使うんです。もっといい机なかったの?せめてなんか敷いたらどうなんだ。。

謎の行政委員は全然強くないんですけどパーティーに参加するわけでもないのになんかついてきてるのはどうなるのか。ちなみに続いています。脚本は意味不明なシーンがあったりなんだり、もうめちゃくちゃですけど一応シリアスなファンタジー映画を作りたいという気持ちはわかるので理解に苦しむことはないと思います。暗黒の王国の皆さんと王女一行が手を組んで悪の王子とその手下の魔術師マジスターと戦おうというところでこの映画は終わり。

ファンタジー映画感想139 スリーピー・ホロウ

スリーピー・ホロウ (字幕版)

1999年。ティム・バートン監督、主演がジョニー・デップという無数にある映画の一つ。私結構好きなんですよ。ジャンルでいうとダークファンタジーなのかな。ゴシックホラー風というか。元はワシントン・アーヴィングの小説「スリーピー・ホロウの伝説」。

 

あらすじ

1799年NYの巡査イカボットはスリーピー・ホロウの連続殺人事件の捜査を担当。四人が殺され首は全て持ち去られていた。村人は犯人は首無し騎士だという。最初信じなかったイカボットも騎士の犯行を目撃し、富豪の娘カトリーナと被害者の息子マスバスと共に騎士を操る犯人を見つけようとする。

 

感想

とりあえずティム・バートンの世界ですよね。暗いんだけど見やすくて、血が盛大に出るんだけど怖くないっていう。ティム・バートンの映画に出てくる血って赤すぎるのか、あるいはあまり苦痛が描かれないからか様式美といった感じである種美しいばかりで怖くないんですよね。

ヒロインはクリスティーナ・リッチですけどまた抜けるようにお肌が白くて綺麗な金髪でいかにもティム・バートンのヒロイン。

衣装が良くてヒロイン、カトリーナのドレスもイカボットの回想で出てくる母親もカトリーナの義母もみんなキャラクターの個性が出る美しいドレスを着ています。カトリーナのドレスで特に印象的なのは死者の木を探しに行くイカボットのところへ馬で追いかけてきたときにきていたコート。銀がかった白のコートで裏地に真っ赤な薔薇が刺繍してあってもうはちゃめちゃに美しいです。あと昔の家に行ったときにきているブルーのドレス。

脚本も良くてミスリードがうまいんですよ。あ、この子が魔女だったのか、犯人だったのか、ってなるんですけど後で、あ!守ってくれていたのか!ってなるのすごく良い。 怖いシーンはほぼないんですけど、助産師の家での殺しだけは怖いですね。直接は描かれないけど子供が殺されるんで。映画だと割と子供の殺しは避けてかかれないことが多いんですけどこれはやりました。もっとも首無し騎士に持ち上げられるところだけで直接殺しを映像では見せません。よかった。見せられると寝覚が悪くなる。

テンポが早いのでかなり早い段階で犯人は超自然的なすでに死んでいる首無し騎士であるということは判明、謎は誰が操っているのか、ということに絞られます。だから魔女は誰か、という映画なんですよね。 美術が良くてアカデミー美術賞を取っています。各部屋の壁紙の色とかドレスの色、髪の色、かぼちゃのオレンジ、花の白、カーペットの赤も素晴らしいバランスなので見る際は是非映像の美しさにも注目してほしい。

富豪のヴァン・タッセル役がまさかのマイケル・ガンボンでした。ダンブルドアが教会で殺されるシーンはなかなか独創的なので是非見てほしい。あのシーンは最高でした。教会に入れない首無し騎士がどうやって教会内に立て篭もった人を殺すか、という工夫。 お気に入りの映画の一つです。

ファンタジー映画感想138 天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ [DVD]

1986年ジブリジェネリックジブリは見てるのにジブリの記録がないので。でもこうやって見直すと本当に無駄がない脚本ですね。特に冒頭。一切無駄な台詞なし。ジブリアニメって長くないので無駄なことやってる暇がそもそもないんですけどこの短いのもいい。

 

あらすじ

亡き父の志を継いで天空の国ラピュタを探す少年パズーの元に空からシータが降りてくる。シータはラピュタの王家の末裔で家に伝わる飛行石のペンダントを狙われ軍と海賊に追われていた。ムスカ大佐に飛行石を奪われたパズーとシータは海賊のドーラ一家に協力しラピュタを目指すことに。

 

感想

1986年か!って驚きますね。そしてオリジナル脚本なんですけど宮崎駿がファンタジーの好きな人なので、あ、これはあれかな、みたいなのを感じつつも宮崎駿のあの頃のメッセージ、自然との共存、過剰な文明の発展への危機意識みたいなものが嫌味なく込められていて非常によかった。

まずパズーがマクドナルドの「お姫さまとゴブリンの物語」のカーディをちょっと思わせる。炭鉱夫なんですよ。パズーは冒頭から非常にキャラがよく出ていましたね。シータを置いて親方を手伝わねばならない時にベストをかけてあげるところで優しさ、親方にエレベーターの操作を命じられて顔をパッと明るくするところ、2番のバルブ、と言われてさっと応じるところから彼が仕事を好きで熱心にやっていることがわかります。「僕、この仕事が大好きさ」とかセリフで言わなくたって行動でわかるんですよ。

シータはちょっとゲド戦記の影響を感じで、まず故郷の名前とか、高地の方に住んでたりとかね。シータが高地の農家の娘で働き者で賢い子だっていうのは、ドーラに飛行石の光が示す方向を伝えたときにもわかりますし、それ以前にもよく働くし体も丈夫でそういうのからも伝わります。

同様にムスカがどういうキャラなのかっていうのも行動からよくわかりますね。彼は頭が良くて目当ては金ではない、女の子に無闇には(最後の方では髪の毛引っ張ったりしてますけど)手を挙げない。そして彼は頭脳派であって体は使わない人なんですよね。ロボット兵が暴れて橋が崩れるシーンでも運動としては大したことはしていない。彼はあまり走ることもしません。そして木や虫を嫌がるっていう。非常にキャラクターがよくわかるし映画全体のテーマにおいて悪役らしい悪役です。

この映画ってテーマだけ言えばドーラ一家はいらないんですよね。ムスカがシータを攫い、パズーが助けに行く。究極シータとパズーとムスカがいればいい。でもドーラ一家がいることでめちゃくちゃに話が魅力的になってるんです。ドーラ一家の息子達と親方や町のみんなの喧嘩はいらないかもしれませんがパズーが明るくていい町のみんなに愛されて暮らしているということからパズーの健全性の描写にもなるし、ドーラ一家の魅力を描いてもいる。そして注意してみてると悪玉以外は人を殺さないんですよ。ドーラが爆弾を街中で爆発されてますが人が逃げた後で家も壊れてません。アニメだからこういう都合のいい爆弾もありますが、ああいう暮らしに余裕のなさそうな町で家壊しちゃうとドーラのことちょっとよく思えないのでこの描写嬉しかったな〜。

汽車での鬼ごっこや地下でポム爺さんのシーンもパズーのキャラ描写にもなりますし、ポム爺さんのシーンも飛行石の描写に必要なシーン。

ラピュタは結局滅びの呪文で天に昇ってしまうので、軍の連中に出会うまでにたっぷりラピュタの廃墟を見せてくれるのも長すぎず短すぎず良い配分。 とりあえず脚本がいいんですよ。絵もいいし、ドーラ一家のメカ系のデザインもいいんですけど脚本もいい。軍の飛行戦艦の名前がゴリアテってのもいいですね。倒される巨人という意味で戦艦の運命を暗示している。

いい映画見るといいですよね〜。途中で携帯いじりたい気持ちに全くならない。 ジブリは全部円盤持ってるわけじゃないんですけどちょいちょい見直して残していきたいと思います。