持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想150 美女と野獣

美女と野獣 (字幕版)

2017年のディズニーの実写映画の方です。これ劇場に見にいって良かったので2日後にまた違う人と見に行きました。エマ・ワトソンがベルを演じたあれですね。ルーク・エヴァンスがガストンで出てて、「ホビット」でイケメン人間弓使いのバルドをやっていたのにヴィランズやるの?と驚きが走ったの覚えています。めちゃくちゃハマり役でしたね。他にはルミエールがユアン・マクレガー、コグスワースがイアン・マッケラン、ポット夫人がエマ・トンプソンと有名どころがガンガン出てました。野獣はダン・スティーヴンス。色々配慮してアフリカ系を増やしています。

 

あらすじ

昔々、傲慢な王子が乞食の老婆を嘲笑った罰として王子は野獣の姿に、城で働く者達は家具に姿を変えられます。薔薇の花びら落ちる前に野獣が誰かを愛しまた愛されなければ呪いは永遠に解けない。数年後、城に本を愛する聡明な女性ベルがやってきます。野獣はベルの愛を得ることができるのか。

 

感想

基本アニメの美女と野獣と同じです。なので元のアニメのファンにも拒否反応が少ない作品でした。時間調整のためにベルの母親がなぜ死んだのかを知るため昔のパリにタイムスリップするシーンとか実写オリジナルソング(野獣の心を表現した曲とかですね)とか挟みますが邪魔になる程オリジナルではないので良いと思います。ペストマスク大好きなんで割と個人的には嬉しいオリジナルでしたが、臭さは増したと思います。やりすぎというか、ね。ベルと野獣が心を通わせるのがあまりにも簡単すぎるよね、ってことでベルの心に野獣が触れるように彼女に取ってパーソナルでセンシティブな部分である母親の死に関わらせたんだと思うんですけど、意図が透けすぎててダサいなという感じはあります。とは言え、これだけでこの映画の評価を避けるべきとは思わないです。私が意図が透けすぎてる展開が好きじゃないというだけなので。

衣装やキャスト、美術、音楽、文句なしです。ル・フウ(ガストンの腰巾着)がただの腰巾着ではなくガストンのあまりの非道さにだんだんついていけなくなるような少し複雑なキャラとして描かれています。 これはいい改変ですよね。新キャラが出たりとか色々ありますが、現代の価値観に合わせる必要があってよろしかろうと思います。

いい映画だったんですけどそこまで語ることないなぁ。良い映画でした。

ファンタジー映画感想149 魔法使いの弟子

魔法使いの弟子(字幕版)

2010年。ディズニー実写。ニコラス・ケイジ主演、監督はジョン・タートルトープ。ディスニーのニコラス・ケイジといえばナショナル・トレジャーですが、この作品はニコラス・ケイジが制作に関わってナショナル・トレジャーのスタッフが再集結して作ったそう。

 

あらすじ

かつて魔法使いマーリンと魔女モルガナが戦い、マーリンの弟子バルサザールたちはモルガナを人形に閉じ込めた。バルサザールはマーリンの後継者を捜しにNYを訪れ、物理オタクの青年デイヴを弟子にする。一方モルガナに寝返ったマーリンの弟子ホルヴァートはモルガナを復活させようとする。

 

感想

まさかのこれ劇場で見たんですよ。母がナショナル・トレジャー好きだったので面白いかもと言われて見に行った気がします。劇場まで行ったのにニコラス・ケイジが魔法使いだったことしか覚えてませんでした。見直してよかった。

明るい物語です。「ファンタジア」の「魔法使いの弟子」のパートを映画にしたような感じですね。有名な箒を操って掃除をさせたら失敗するシーンもあります。ただちょっとアニメそのものって感じではないので元のファンタジアのファンはあまり期待しすぎないでください。

ディズニーの映画なのでちゃんとしていて、強すぎる魔女とペーペーの魔法使いの弟子デイヴとの戦いもデイヴが研究している物理の力を使って戦ったりしています。善なるマーリニアン、マーリン側の人々は優しくて人と協力し、悪なるモルガニアン、モルガナ側の人々は仲間にも冷たくて仲間を殺して力を吸い取ったりするんですよ。これは誰も悪には感情移入できない。

でもなんとなく悪に魅力がない。なんでかっていうと最後方までモルガナ復活しないんですよね。そしてようやく復活したモルガナをデイヴが割とあっさり倒して終わりなんですけど、ずっと復活しないからモルガナの影が薄いんですよ。

あと主人公に魅力が足りないかな。頭良くて自分の専門分野には詳しくて、憧れ性と共感性(冴えないモテないオタク)をキャラクターに持たせようっていう意図は感じるんですけどどうもオタクっぽすぎたかな。

NYの様子を見せるっていう意図は感じましたしよかったと思います。走るタクシー、中華街、高層ビル、公園、とかね。

でもどうにも気が散る映画で集中してみるのが結構難しいです。見ても誰も不快にならないと思いますけど見ても特に意味のない映画です。2時間時間を潰したい、途中で寝ても後悔のない映画を選びたい、っていう時にはおすすめの映画です。見逃して困るシーンがないのでいつでも好きなタイミングで居眠りして大丈夫です。

ファンタジー映画感想148 アバター

アバター (字幕版)

2009年。ジェームズ・キャメロン監督。大ヒット映画ですねー。2時間41分の上映時間たっぷり使ってナヴィの人たちに感情移入させてますし、いい脚本だと思います。過不足ない。モーションキャプチャーで描かれたナヴィの人たちのデザインもいい。

 

あらすじ

下半身付随の元海兵隊ジェイクは惑星パンドラでのアバタープロジェクトに参加する。地球人は稀少鉱物を求めてパンドラの先住民族ナヴィの森を壊そうとしている。最初スパイしていたジェイクだがナヴィの暮らしを学ぶうちナヴィの娘に恋をし、ナヴィの方に心惹かれるようになる。

 

感想

脳筋族への怒りがわくタイプの映画ですねー。 シンプルな昔ながらのファンタジーなんです。側がSF風味なので新しくみえますけど基本は昔からある話なので誰でも受け入れやすい。 お金のかかったプロジェクトなので映像美でダメなところはないです。

ナヴィのデザインも絶妙で、最初は青すぎる体から異物に見えるんですけど、彼らの自然をリスペクトする生き方を学ぶうちに彼らが美しく見えて来る。代表はネイティリですよね。最初は宇宙人に見えるけどだんだん可愛くセクシーに見えて来る。その感情移入がジェイク共に観客にももたらされる。観客とキャラクターの心が一つになる。良い脚本です。

悪玉と善玉がはっきりしてるのもわかりやすいですよね。無駄に2とかつくらないのもよかった。最後もハッピーエンドで良かったと思います。

実は私最初に見た時からこの映画あんまり好きじゃなくて、良い映画だ、よくできた映画だってことがよくわかってる今でもあんまり好きじゃないんです。良い映画だからって好きじゃないって例の一つですね。別に嫌いじゃないし不満もないんですけど。なんでなんだろうな。ここがいや、とかここがムカつくとかもないんですけどね。いいとこばっかりなんだけどな。よくわかりません。

森も綺麗だしメッセージもいいと思うし過剰に説教臭くもないし。まぁ多少メッセージ過多ではありますが許容範囲なのにな。謎です。 でも映画としては良い映画。大ヒットもしましたし、見といた方がいい映画だと思います。3時間だし教養の範囲だと思います。ほんと、どこも悪いとこ無いんですよ。ジェイクがナヴィの人々に認められる過程も急すぎない、ちゃんとしてる、ジェイクとネイティリが恋に落ちる過程も無理がない、わかる、これなら恋に落ちるよね?ってなる。ナヴィの文化も違和感ない。何が私の心を燃やさないのか。よくわかりません。たくさん入るモノローグが嫌なのかな?でもそんななしでもないんですけどね。

ファンタジー映画感想147 アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 [Blu-ray]

2016年の映画です。ディズニー実写。キャスト続投ですが監督はジェームズ・ボビンに。前作から3年後の設定です。今回はオリジナル度が高くてジャバウォックに殺されたハッターの家族を時間を遡って助けようと言う物語。

 

あらすじ

前作から3年、アリスはアンダーランドに戻る。ハッターは殺されたはずの家族は生きている、探してくれという。アリスは時を司るタイムからクロノスフィアを盗み過去へ戻る。ハッターの家族は生きていて赤の女王に監禁されていた。しかしクロノスフィアを盗んだことから世界は崩壊し始め…。

 

感想

前作より画面が明るくて美しいです。白の女王の統治する世の中なので。でもそんないい映画なのかっていうとそうでもないんですよね〜。

まず、なんでそんなにまでしてハッターの望みを叶えてやらなきゃならないのか、が謎なんですよね。いや、ジョニー・デップだと思えば当然なんですけど、物語のキャラとしてみれば俳優が誰かとか関係ないじゃないですか。前作でハッターはアリスの味方でしたけど、割と感情的でそんなにアリスがハッター大好き!ってなってるのが謎というか。まぁ不思議な国なので普通にいい人ってあんまいないんですけどね。

美術や衣装は相変わらずすごく良いです。今回オリジナル要素が強いので赤の女王の手下にジュゼッペ・アルチンボルドの絵みたいな人がついてるんですけど、確か前作でアウトランドに追放されたはずだけどそこで見つけた手先かな?アルチンボルド肖像画の人は確かにこの世界観にあってますが。

見ても見なくてもいい映画ですけどディズニーなのでそれなりに豪華で楽しい。見ても特に害もない。 最後の説教くささは多少鼻につきます。 原題はAlice Through the Looking Glassで鏡の国のアリスの原題Through the Looking-Glass, and What Alice Found Thereに準じてますけど鏡関係ないです。アンダーランドへの行き方は鏡の国のアリスと同じです。猫のダイアナ本当に出てこないですよね。映画だと。

ファンタジー映画感想146 ラーヤと龍の王国

ラーヤと龍の王国 (字幕版)

2020年ディズニーアニメ。アジアが舞台の話ですねー。実は私の故郷にも人々を守るために命を落とした龍の伝説があって、私はそれを聞いて育ってきたのでなかなかこの話は感慨深かった。 ドラゴンって西洋と東洋とでかなーり違うんですよ。西洋ではドラゴン、竜は悪の化身です。黄金を好み、人を殺す。東洋のドラゴン、龍は神聖な生き物、雨を降らせるものですね。この映画の龍シスーは東洋のドラゴンです。雨と平和の生き物。人は水がなければ人は生きていけない。だからドラゴンのイメージもかなり違います。西洋は火のイメージですね。

 

あらすじ

昔クマンドラでは怪物ドルーンが人を石に変えた。龍は人々を救うために自らを犠牲に石を作り怪物を封じた。世界は救われたが国は5つに分断、争うように。500年後ハートの姫ラーヤはファングの姫に騙され龍の石が割れドルーンが蘇った。ラーヤは龍と共に割れた石を集め石化した人を蘇らせる。

 

感想

これはかなり気合の入った作品で評価も高いです。私もよかったと思った。無理がないです。絵も綺麗だし音楽もいいし、舞台はアジアっぽいんですけど、五つに分かれた国全てがそれぞれ違う特徴を持ったアジアの国なんですよね。日本ぽいとこはないですけど。東南アジア系かなぁ。アジアといえど違うアジアなので目先も変わって飽きないです。

キャラクターの行動や気持ちに納得できないところも違和感もありません。時間配分も適切。説明不足もないです。素晴らしいのでこれは是非見てほしい。シスーのキャラがちょっと軽い、と思う人がいるかもしれませんけど、シスーはこの手の映画なのでこれでいい思います。

クライマックス、ラーヤの決断はかなり胸にきますね。 あと石化した人が大体みんな手を揃えて雨を受けようとするような、祈りのような姿勢で石化するんですよ。あ、最後龍が雨を降らせてその水を受けて蘇るんだろうなー、と思うんですけど良いポーズでした。

これは見た方がいい映画。各国で龍の石のかけらを集めると同時に仲間も増えていくんですけど、船長兼シェフのブーンも、赤ちゃん詐欺師のノイも戦士のトングもいいキャラですね。ブーンが1番東アジアっぽい見た目ですね。 ツーブロックのナマーリは悪役に近いキャラなんですけどアジアの話なんで単純な悪玉ではないです。とりあえずこれは見てほしい〜!いい映画です!

 

ファンタジー映画感想145 アルテミスと妖精の身代金

アルテミス・ファウル 妖精の身代金 (角川文庫)

2020年ディズニーの実写作品です。 元々はポッターが凄く流行った頃にたくさん出てきた海外児童文学なんですよ。原作者はオーエン・コルファー。アイルランド人です。この作品もアイルランドが舞台。アイルランドといえば妖精ですけど、なるほどこのお話も妖精の話ですね。 元々は劇場公開を狙ってたんですけどコロナだのなんだのでディズニープラスでの配信となりました。原題はArtemis Fowlで主人公の名前なんですが、ポッターシリーズの影響を受けて「主人公名と〇〇の××」方式のネーミングにされています。基本Amazonのリンクを貼ってるんですが、この作品なんか見つかりませんので(Disney+でしか見れないのかな?)文庫のリンクを貼っています。

 

あらすじ

父親を誘拐された天才少年アルテミス・ファウル2世は身代金として求められた妖精たちの武器アキュロスを探す計画を実行する。一方地下世界で魔法とテクノロジーを駆使して暮らす妖精たちは行方のわからないアキュロスを探していた。妖精の1人ホリー・ショート大尉は失踪した父親を行方に関するヒントを手に入れ、上官の命令に逆らってアルテミスと接触を図る。しかしアルテミスはホリー大尉を捕らえたのだった。

 

感想

ディズニーが作ってるんで金はかかってて、役者も主役とヒロイン新人ですけどコリン・ファレルジュディ・デンチジョシュ・ギャッド(オラフ、それに実写美女と野獣のル・フウですね)とかちゃんとしてるんですよ。でも見るのが苦痛な映画って存在するんですよね。不思議。監督はケネス・ブラナー。実写シンデレラとオリエント急行殺人事件の人ですね。シンデレラもオリエント急行殺人事件もあんまり好きじゃなかったけどこれも好きじゃないですねえ。何がダメなのか。 まず、多分これシリーズにするつもりで作ったんでしょうね。悪役があまりにも不明すぎる。ちゃんと毎年公開する目処が立ってて撮影も済んでるなら全部続けてみて意味がわかる作り方してもいいと思うんですけど、そうでないならある程度一作できちんと完結する話にしないといけないと思うんですよね。でないと何?ってなってしまう。

次にアキュロスですよね。単語自体もオリジナルだし、武器で時間を操る、どこにでもゲートを繋げられるということ以外よくわからないんですよ。映画中で見つかるんですけどデザインも微妙なんですよね。 いろんな人のいろんな思惑が絡み合うのは面白いんですけど描き方が雑だとすべてが中途半端になるんですよね。最初の方のショート大尉をテクノロジーで外にやるシーンとかに時間使わなければもっとストーリーちゃんとやれたんじゃないかなぁ。最後も適当すぎましたね。ルート司令官と敵対する人もなんか魅力ないし。「見るのが苦痛映画リスト」に加わった一作です。

 

 

 

ファンタジー映画感想144 ハウルの動く城

ハウルの動く城 [DVD]

ハウルの動く城 [DVD]

2004年ジブリ。宮﨑駿監督作品。原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名の小説です。実は私原作小説大好き、というかダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は大抵好きなんです。だからこの映画のことちゃんと語れないんですよね。好きすぎると公平な目で見れないってやつですよ。この映画は原作とかなり違うので色々言われることもありますが、映画は映画で好きです。

 

あらすじ

帽子屋の娘ソフィーはお祭りの日魔法使いハウルと出会う。ハウル荒地の魔女に追われており逃亡に手を貸すソフィー。その夜自宅に戻ると魔女が現れソフィーを呪いで90歳の老婆に変える。このまま家にいられないソフィーはひょんなことからハウルの動く城に掃除婦として住み込むことに。

 

感想

この映画ってジブリ作品の中ではそんなに評価の高い作品じゃないんです。色々理由はありますけど、まず最後の広げた風呂敷をクシャクシャっと丸めたような終わらせ方、謎の戦争、意味深なソフィーのセリフとかですね。

読解力のない人だとソフィーは呪いで老婆になってるはずなのに作中で年齢がコロコロ変わるのは何?って言うのも引っかかるみたいです。原作読んでるとある程度わかりやすいんですけど、まずソフィーって魔女なんですよ。魔法学校とか行ってるわけではなくて生まれながらにその力があるんですね。でもこのダイアナ・ウィン・ジョーンズの魔法使いってハリー・ポッターとかしか魔法使いを知らない人が見ると結構難しい設定なんです。

多分ですけどフィクションの魔法使いって①血筋で魔法が使える②魔法学校に行ったり弟子になったりして魔法が使える③血筋+学校④悪魔や精霊との契約⑤超能力のように全くランダムに生まれつき不思議な力(魔法)が使えるがあると思うんですが、ハウルは叔父が魔法使いで且つ魔法学校に行っていたので③、それでいて悪魔と契約してより強い力を得ているので④なんです。で、ソフィーの魔法は⑤のタイプなんです。併存してるんですよ、いろんなタイプの魔法使いが。で、このソフィーの魔法というのが万能すぎるんです。なんと言った通りになる、という魔法。ソフィーが杖に「おや、あんたは魔法の杖だね?」というとその瞬間ただの杖が魔法の杖になっちゃうんです。やばい。こんなチートあるかって感じですがまぁそういう魔法なんです。だから最後ソフィーが「カルシファーが千年も生きてハウルが心を取り戻しますように」というとその通りになる。実はこの手の「言った通りになる」魔法が使える魔法使いはダイアナ・ウィン・ジョーンズでは他にもいて、「魔法使いは誰だ」っていう話でもこのタイプの魔法使いが出てくるんですけど、そいつがめちゃくちゃアホだったせいで大変なことになるシーンがあって死ぬほど笑えるんでいつか読んでください。

戦争は宮﨑駿のオリジナル要素ですけど、私はあれ良かったと思います。戦争がないと物語的高まり無くなっちゃうんで。 ハウルに対する荒地の魔女の呪い、ハウルの心臓は奪われてしまうのか、という物語的緊張と、ソフィーとハウルの恋はどうなるのかという緊張、ソフィーは呪いが解けるのかという緊張があるんですけど全部規模が小さいんですよね。これに旗色が悪くなる激化していく戦争という外的な緊張が加わるわけです。これがあると個人的な葛藤の際に絵として周囲の世界がどんどん怖くなっていくように描けるわけで、これでより物語にスパイスが効くわけです。

ソフィーの年齢の話ですが、気持ちによって外見年齢が変わるんです。冒頭を思い出してください。ソフィーは外見に自信がない地味な少女でした。妹のレティーはモテて、お化粧も派手だったでしょう。二人姉妹で一人がすごく綺麗でモテまくりで外交的な性格で、一人が引っ込み事案で、という性格だったらどうしても必要以上に自分の外見を低く評価してしまいそうでしょう。ソフィーは最初からハウルに恋をしていますしハウルは派手で華やかなイケメンなんですよ。カンタとは違うタイプ。だからソフィーは余計自分の外見を気にして好きになってはいけない、好きだと知られてはいけない、若い娘になったらハウルとの関係は恋人になるか、なれなければ別れるしかない、でも老婆なら、そうしたら母親のような立場でずっとそばにいられるんです。だからソフィーはハウルマルクルと暮らして楽しくてどんどん溌剌としてそれに合わせて若くなるんですが、ハウルとの恋愛において臆病になるとどうしても老婆になってしまうんです。ソフィー自身が老婆であることに居心地の良さを感じている。だから呪いを解くことはもう彼女の目的ではなくなってるんですよ。正直最初からどうしても解きたいという感じではない。帽子屋で臆病な灰色の生活を送って、そのまま70年暮らすよりは、ハウルやみんなと1年間を幸せに過ごす方が彼女にとっては幸せでしょう。彼女、実際全然呪いを解こうとしないでしょう?解かなくていいんです、呪いなんか。あの凸凹家族といたいだけ。だから彼女自身の魔力も使って老婆でいるわけです。

この映画って3人の老いた魔女(サリマン先生、荒地の魔女、ソフィー)がハウルを取り合う話になってますね。ジブリだからいちいちいうことでもないんですけど絵が綺麗で音楽がいい。あとハウルの鳥になるシーンはどうしてもクラバート。