持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想2 エラゴン

エラゴン遺志を継ぐ者 (吹替版)

2006年。原作小説読んだ後の視聴。そもそも三部作なのだが一作目の後続きが作られない。王道ファンタジーだが王道すぎるのが個性のなさに。生まれたてのドラゴンが可愛い。原作小説ではドラゴン用の鞍作るところが好きだった。あとは普通のファンタジー映画。ゲーム的。

 

あらすじ

エラゴンはある日森でドラゴンの卵を拾う。卵は孵り二人は心を通わせる。帝国の暴君ガルバトリックスの手下に伯父を殺されたエラゴンは、元ドラゴンライダーのブロムと旅をしながらドラゴンライダーの修行を積む。ヒロインはエルフの王女アーリア。伝説の剣や魔法も出てくる。 

 

感想

非常に典型的なファンタジーでなんですよね。いい意味でも悪い意味でも典型的なので、普通の人がイメージするファンタジーそのもの、それを見たい人が見れば満足だし、そこより1段階上のものが見たい人が見ると不満が残るわけです。どっかて見たような話だな、と。

クリストファー・パオリーニが自費出版で作った本が人気になって、というファンタジーの第1作です。この物語のどの辺が典型的かというと、まず①特別な生まれである主人公が親元を離れて別の人に育てられている、②主人公には特別な力、③悪い奴がやってきて育ての親を殺す(善と悪との対立のある世界)、④仇をとりに旅立つ、⑤師ができて彼の弟子になり修行を積む、⑥師が死ぬ、⑦綺麗な女の子との出会い、とかね。もう、ほぼほぼスターウォーズです。というか物語の典型なんですよ。伝統的だと言えばそうだし、先が読める、どこかで見たような話だ、と言われればそう、という感じですね。

これ、本当はもっとヒットを見込んでいたんでしょうね。本当は3部作の予定でしたがヒットしなくて1作で打ち切り。○部作の予定が思ったよりヒットしなくて一作目で終わりっていうファンタジー映画無数にあります。2006年の映画なので、時代で言うとLOTRは三部作終わって、ハリポタは炎のゴブレットの翌年かな。ファンタジー映画がヒットするぞということであちらこちらでたくさんファンタジー映画が作られた時代につくらえた一作です。でも全部がヒットするわけではないのでね。LOTR原作の指輪物語は不動の地位を築いていますし、ハリーポッターはシリーズ始まって数年だと思いますがでもヒットの規模がエラゴンとは違うので。エラゴンシリーズもファンタジー小説として大ヒットしましたが、でもハリポタを好きな人が他に似たような話がないかな、と探して見つけるようなお話なのでね。

衣装、美術、CG等お金がかかっていて変なところは一切ないです。ドラゴンのデザインも良いと思います。女性のドラゴン、サフィラ。動きもルックスも女性のドラゴンらしさが出ていていいです。原作で私の好きなところはサフィラのためにエラゴンが自分で工夫して鞍を作るシーンなんですが。。そこはなかったな〜。「ブロムが作ってくれた!」で終わってました。何がダメだったかというと私的にはまず①主人公の魅力が足りない、②ピンチが十分なピンチではなく主人公が自力で切り抜けない、③敵に魅力がない、これだと思います。

①は、エラゴンって未熟で傲慢なんですよ。未熟なのはいいんです。この手の長い間旅をして冒険を経て主人公の成長を描くタイプの話だと最初は大抵視聴者と差がないようなキャラにするものなので。そして未熟だから自分の力を高考えすぎていてちょっと傲慢なのも、というかちょっとビッグマウスのなのもありがちです。でもこのエラゴンはその匙加減がよろしくなかった。未熟ゆえにいろんな間違いをするんです。それはいい。待ってろって言われたところで待っていない、行くなと言われたところに行く、するなと言われたことをする。でもそれがあまりにも多いのと、師であるブロムが優しく穏やかに忠告してくれたことも守らないんですよ。これね、ブロムが何も説明してくれなかったりいつも怒っていて怒鳴ったり殴ったりする人なら反発していうこと聞かなくてもなんとなく気持ちはわかる。でもブロムはずっと優しいんですよね。それなのに「許可は取らずにやってから謝る」とか言ってるのはアホでしょ。挙句にそれでブロム死ぬし。この主人公マジで何??となってしまう。

②については一応いろんなことが起こるんですよね。例えば敵が刺客をおくって実家が焼かれ伯父さんが死ぬ、とか旅の途中で立ち寄った街に敵が来て焼かれる、とか森で追っ手に襲われる、とか敵に騙されてエルフのお姫様を助けに敵のアジトへ行ったら罠だから騒ぎになる、とかね。でも全てのピンチ、エラゴン別に解決しないんですよ。仲間がなんとかしてくれる。唯一エラゴンの魔法でなんとかなるのもありますが、エラゴンは魔法を努力して身につけたわけじゃなくて生まれ持っての才能でなんとかしてしまう。これではエラゴンがアホのままなのは仕方ないとなってしまう。

③はあれですね。原作者が書いた時子供だったから仕方ないのかな。でも映画にするときは脚色すべきでした。ガルバトリックス(敵の親玉、現国王、裏切ったドラゴンライダー)もダーザ(敵の魔術師)も子供が考えた悪役みたいなんです。つまり、ただただ残酷で乱暴。特に理由なく手下の雑魚を殺したりする。これ、いくらなんでも悪役についてこなくないですかね?悪はもちろん嫌われなきゃいけないんで善玉サイドよりは悪くていいんですけどいくらなんでもこれはちょっと。。この傾向はヴォルデモートにもありましたけどヴォルデモートもここまで意味なく手下に暴力は振るわなかった。悪がよくわからないならLOTR並みに描かないっていう手もありますよ。描くのは一番上の親玉ではなくてもっと下の悪、想像の及ぶ範囲の悪だけにしておくっていう手が。とりあえずベタベタな冒険ファンタジーが見たければ満足、良い映画が見たければ物足りない、という感じです。