持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想100 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (字幕版)

2003年。LOTR3作目、完結編。オタクの贔屓目抜きでファンタジー映画の傑作。アカデミー賞史上最多11部門受賞(作品賞、監督賞、脚色賞、作曲賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、音響賞、編集賞)。全てが一つになる壮大なラストです。3年間毎年楽しみに見ていた壮大な冒険の完結ですからね。しかも一作ごとにその物語が完結する方式ではなくて本当に3本で一つの物語。後出しのネタもないんですよ。ファンタジーを読む、ファンタジーを好き、となったらこれは外せない作品なので是非万人に履修してほしい…。ただのオタクの叫びですみません。でもこれは本当に外せないので…。

 

あらすじ

サウロンが力を増す中、アラゴルンはゴンドールへ帰るが、執政は王の帰還を歓迎せずモルドールと戦う準備もしない。メリーはローハンの、ピピンはゴンドールの騎士となりそれぞれ指輪戦争へ兵士として赴く。ゴラムの策にハマりフロドはサムを追放、滅びの山へ向かうがその先には怪物が待つ。

 

感想

まずこの作品の何がアカデミー賞作品賞、脚色賞取れたかっていうと、出だしが良いんですよね〜!これは原作通りではなくてオリジナルなんです。原作ではガンダルフが恐らくベースで語るだけの話をゴラムの回想として、しかも最後の作品の冒頭に入れたんですよ。指輪に蝕まれる前のゴラムと友人が指輪を見つけるところから始まる。ここで戦士でもなんでもない、ホビットの友人同士の生々しい素手の殺し合いが起こるわけです。これは燃える目が出てきたり大軍勢が村々を蹂躙するよりもある種指輪の恐ろしさを描く良いシーンだと思いますね。普通の、仲の良い友達同士でさえこんなふうになってしまう。だって指輪を拾うまで、スメアゴル(ゴラムの昔の、普通のホビットとして生きていた時の名前です)もデアゴルも本当に楽しそうに遊んでいたんですよ。そして同時にこのシーンはゴラムの複雑なキャラクターを理解する上でも重要なシーンです。彼って悪役なんですけど全き悪ではないんですね。優しくされたり親切にされたりすると嬉しくて、フロドに尽くそうとしたりもするし、一方で指輪のためなら決して特別賢いわけでもない彼の知恵を絞ってなんとかしようとする。さらに友達を殺させ、自分をこんなふうにした指輪を憎んでもいる。ゴラムは裏主人公です。フロドのifでもある。フロドが指輪に完全に魅入られてしまったらどうなるか、という。

この旅ってみんなが変わってしまった旅なんですよ。ボロミアは自分の醜さに直面し、最後は自分を取り戻してメリーとピピンを守って、でも死んでしまった。ガンダルフは火と死をくぐり抜けた。レゴラスは一番変わらなかった口ですが、それでも彼の森を見つけましたしドワーフと友情を築きました。ギムリレゴラスと仲良くなったのもそうですが、ガラドリエルの奥方との出会いは彼にとって人生を変えるものだったでしょう。アラゴルンは自分の国に帰って生まれついての者となり、そしてアルウェンと結ばれた。フロドはあまりにも大きな使命を果たしたからなんだかもう天使みたいになってしまった。彼はアマンに行くしかなかったですね。とどまるような人では無くなってしまった。サムは勇者になりました。私としてはメリーとピピンの変化が一番胸にきました。あんなにお気楽なホビットの若者二人組でいつもふざけていて、コミックリリーフそのものだったのにその彼らがそのままではいられなくなる。彼らは彼らの大切なもの、友人や故郷を守るために小さな体で指輪戦争に臨んでいくんです。物語の初めの頃の彼らならとてもしなかったような決断もできるようになった。だってメリーなんて最初は1日のご飯の回数のことでごちゃごちゃ言ってアラゴルンを呆れさせていたのに、アングマールの魔王を倒したんですよ。

エンディングももサムの帰宅で終わるところが素晴らしい。行きて帰りし物語の帰った瞬間の感動。変わってしまったものは戻らないけれどそれでも意味があるんですよね。これは原作通りのエンディングなんですが、私原作読んだときにこのエンディングには胸がいっぱいになって数時間何も考えられないくらい感動したので、その名エンディングをそのまま使ってくれて本当嬉しかったです。