持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想143 千と千尋の神隠し

千と千尋の神隠し [DVD]

2001年ジブリ作品。監督、脚本宮﨑駿。原作はありませんが、柏葉幸子の「霧のむこうのふしぎな町」が元ネタになっている部分がたくさんあります。少女がふしぎな世界に迷い込み、そこでは働かねばならず、怖いお婆さんがいて、働くことで少女が成長する。それくらいですけど、でもエッセンスはありますね。あと「クラバート」。これはドイツのプロイスラー原作のファンタジーで、湯婆婆が鳥になるところや魔法使いの弟子をやめられないところ、弟子をやめるにはたくさんの人が変身した動物の中から目的の人物を探さねばならないところ。

 

あらすじ

10歳の千尋は両親と無人の町へ迷い込む。両親は千尋が止めても聞かず勝手に食べ物を食べ豚に変えられてしまう。魔法使いの少年ハクに助けられた千尋八百万の神が疲れを癒す湯屋で働くことに。湯屋の主で魔女の湯婆婆に名前を奪われた千と名を変えた千尋は働きながら両親を助けようとする。

 

感想

124分なのでジブリ映画としては長いのかな?でも長さを全く感じさせないです。こんなことわたしが言うのもお恥ずかしいですが一切無駄がない。全てのシーン、全てのカット、全てのセリフに意味があります。映画とは時間の芸術である、と私シナリオ習ってた時に言われたんですけどまさにそれ!

散々みんなこの映画について語っているので繰り返しを避けますが、避けちゃうと何も言うことないんですけど、まずカオナシ、いいですよね。このキャラクター。怖い。でも悲しい。そしてちょっと可愛いんですよ。一応この映画の悪役なんです。油屋の従業員3人食べてるんで。でもカオナシって不思議で、千尋が主人公だからって言うのもあるんですが「悪だから倒さねばならない」っていう相手じゃないんですね。ひょっとしたら主人公が違ったら殺していたかもしれないけれど、こういう欲望と寂しさの具現化みたいな人、物理攻撃じゃ倒せないだろう。千尋に砂金を出したのに拒否られたカオナシの「いやだ」「さみしい」「千欲しい、千欲しい」って言うセリフ、怖いけれどさみしい、悲しいセリフです。

ハクって実はそんなに千尋を助けてないですし、千尋が油屋でガンガンに働き出してからは出て来なくなっちゃうんですけど、最初の出会い、なんか丸いの食べさせて魔法で立たせてくれるの、釜爺を探せの助言、その後の「ハク様と呼べ」のツン、そしておにぎりのデレ、と的確に印象に残る優しさを出してくるので後半千尋がハクのためにめちゃくちゃ勇気出して頑張っても違和感ないんですよ。登場人物の動機に疑問が湧かない。脚本がうまいんですよ。うまい〜! 絵は当然めちゃくちゃ綺麗。音楽も最高。言うまでもないですね〜。

そしてこの映画で印象的なのは水ですね。水が非常に印象的に使われる。流水が汚れを洗い流し、浄化し、汚れたもの、悪いものの中には汚れた汚い水が溜まっている。 あとあれですね、この映画、異界と我々の世界との境界がよく出てくる。まずトンネル、川、橋。全部異界との境界だったり、異界とこちらをつなぐものだったりします。書いてると無限なのであれですけど、悪いものとかあちらものって川を渡れなかったりするんですよ。あとあれもそうですね。エレベーター。湯婆婆の部屋、最上階でしょう?あれ、経営者だから当然なんですけど、エレベーターって空間を縦に貫いているので、あれも異界との道なんですよね。下の方はバックヤード、釜爺なんかが働いてるところですね。それからお客さんがお風呂に入っていたり宴会をしている表の騒がしく華やかな油屋があって、そして最上階は豪華で静かな湯婆婆ハウス。全く雰囲気が違います。 この映画は行きて帰りし物語ですけど物語内でも沢山行き来しているの面白いですね。

私のジブリ好きな映画ランキング1位はこれかな。2位がラピュタ