持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想158 えんとつ町のプペル

 

映画 えんとつ町のプペル

2020年日本の映画です。監督は 廣田裕介。原作絵本読んだことある状態で見ました。これは…可哀想だけどあんまりよろしくない映画ですね。最初は絵の美しさにワクワクしたんですよ。さすがスタジオ4℃。でも話が始まると粗が目立って仕方なかった。

 

あらすじ

煙に包まれて空の見えないえんとつ町でえんとつ掃除をするルビッチ。ハロウィンの夜にゴミで出来たゴミ人間のプペルと出会う。2人はルビッチの父が生前信じていた外の世界、星空を求める。しかし星の存在を話してしまったプペルは異端審問官に追われるようになる。

 

感想

とにかく絵は美しいです。さすがスタジオ4℃
でも絵がいくら美しくても、プペルとルビッチの声優さん(窪田正孝芦田愛菜)がいくら演技がうまくても誤魔化せないものがありますよ。 監督と脚本がクソ中のクソなんですよ。口が悪くてごめんなさいね。
なんかシーンとシーンの繋ぎが唐突だし、キャラクターの心の動きが不自然なんですよ。やりたいことを無理に詰め込んでいて、それが映画にとって必要なシーンなのか誰も考えてないんですよね。考えてー!! そもそも絵本一冊分の話を2時間映画に直すのって難しいんです。それを脚本と監督がやばいせいで明らかなる時間稼ぎのシーンが延々と続くんです。

最初のハロウィンダンスのシーン、長くないですか?そのダンスシーンの中に動きがあればいいんですよ。誰か逃げてるとか何かを狙っている人と逃げる人がいて、ダンスに紛れながらチェイスするとかね。それなら意味がある。でも単なるダンスなんですよ。それも冒頭に持ってくるから意味がわからない。

アクションシーンは時間伸ばすのに使えるし、まぁ映画にはあっていいんですけど挿入が不自然。あと脚本が下手なせいなんですけど、というかこの映画の問題の全ては下手な脚本なんですけど、とにかくシーンとシーンの繋ぎが変。ルビッチがなぜ最初あそこまでしてプペルを助けたのかわからないし、その後めちゃくちゃ嫌ったのに唐突人友達になって!と言い出したのかも不明。プペルはいい声なので魅力的な気がするんですが、プペルの気持ちの変化とかプペルが何考えてるかとか完全に不明。プペル、何?

あとそもそもの話で申し訳ないんですけど世界観の設定が雑〜!!炭鉱町で煙突が多くて空が見えないのはわかります。でも異端審問官の存在する意味となんで外の世界を隠してるのかということの合理的な理由なくない?だって鉱物だか石炭だか掘り出して、絶対外に売ってるじゃないですか。意味がわからない。これね、貧民層だけ空のない環境に暮らしてるとかならわかるんですよ。でも為政者まで悪環境で暮らしてるとなると。変な側近みたいなやつに騙されてることになってるけど。なんかやりたいことだけ先に決めててそれを無理に押し付けたみたいというか。あと異端審問官に追われてる割に秘密知ってる人が多い…。

セリフも変なんですよ。時間稼ぎのための長い台詞は、まぁダメなんですけどなんで入れたのか意味はわかるんですよ。なんとかこの映画を2時間に伸ばすためですねってなるんですけど、それ以外にもある。質の悪い子ども向け映画だからいろんなこと突っ込んじゃいけないのかなーと思いきや、たまに妙に現実的なつっこみがあったり。なんか、言わせたい決め台詞があって、それを言わせるために物事の流れを無理に合わせてるんですよね。
セリフってセリフだけ先にあっちゃダメなんです。
まず人がいて、映画だとキャラクターですけど、その人の背景、置かれた状況があって、その中でその人の気持ち、動機があって、そして複数人の気持ちや行動がぶつかり合って、その中から自然に出てくるのがセリフなんです。「かっこいいセリフ思いついた!これ、言わせたいからなんか言えそうな状況作っちゃおう!」じゃダメなんですよ。それではキャラクターが生きていない。リアリティーがないんです。

あと回想の挿入が不自然。 回想って時間の流れを止めるので、基本的に現在で何か起こってる系の話だとあんまり挟んじゃいけないんですけど、この話めっちゃ入るんです。しかも現在から回想への入りが唐突だから最初回想って気が付かないんですよね。


結論、脚本と監督のやばさを絵の美しさとメインキャラの声優のうまさがカバーし切れてなくて見続けるのがしんどい映画です。人生の2時間を無駄にしたい場合以外は見る必要なし。逆に言えばクソ映画マニアは見るべき。お金をかけても、声優が良くても、クソ映画って作れるんだな!という例。2020年クソ映画・オブ・ザ・イヤーですね。この映画最高って言ってる人は原作者の信者か、ろくに映画も見ていなければ本も読んでない、漫画もアニメも見ていない人だと思います。