持丸のファンタジー映画感想

基本ネタバレなしのあらすじと感想で構成されています。ファンタジー映画である限りどんなC級であろうと見なければならない呪いにかかっています。記事の頭に画像があるのはリンクで飛べます。

ファンタジー映画感想144 ハウルの動く城

ハウルの動く城 [DVD]

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2004年ジブリ。宮﨑駿監督作品。原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名の小説です。実は私原作小説大好き、というかダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は大抵好きなんです。だからこの映画のことちゃんと語れないんですよね。好きすぎると公平な目で見れないってやつですよ。この映画は原作とかなり違うので色々言われることもありますが、映画は映画で好きです。

 

あらすじ

帽子屋の娘ソフィーはお祭りの日魔法使いハウルと出会う。ハウル荒地の魔女に追われており逃亡に手を貸すソフィー。その夜自宅に戻ると魔女が現れソフィーを呪いで90歳の老婆に変える。このまま家にいられないソフィーはひょんなことからハウルの動く城に掃除婦として住み込むことに。

 

感想

この映画ってジブリ作品の中ではそんなに評価の高い作品じゃないんです。色々理由はありますけど、まず最後の広げた風呂敷をクシャクシャっと丸めたような終わらせ方、謎の戦争、意味深なソフィーのセリフとかですね。

読解力のない人だとソフィーは呪いで老婆になってるはずなのに作中で年齢がコロコロ変わるのは何?って言うのも引っかかるみたいです。原作読んでるとある程度わかりやすいんですけど、まずソフィーって魔女なんですよ。魔法学校とか行ってるわけではなくて生まれながらにその力があるんですね。でもこのダイアナ・ウィン・ジョーンズの魔法使いってハリー・ポッターとかしか魔法使いを知らない人が見ると結構難しい設定なんです。

多分ですけどフィクションの魔法使いって①血筋で魔法が使える②魔法学校に行ったり弟子になったりして魔法が使える③血筋+学校④悪魔や精霊との契約⑤超能力のように全くランダムに生まれつき不思議な力(魔法)が使えるがあると思うんですが、ハウルは叔父が魔法使いで且つ魔法学校に行っていたので③、それでいて悪魔と契約してより強い力を得ているので④なんです。で、ソフィーの魔法は⑤のタイプなんです。併存してるんですよ、いろんなタイプの魔法使いが。で、このソフィーの魔法というのが万能すぎるんです。なんと言った通りになる、という魔法。ソフィーが杖に「おや、あんたは魔法の杖だね?」というとその瞬間ただの杖が魔法の杖になっちゃうんです。やばい。こんなチートあるかって感じですがまぁそういう魔法なんです。だから最後ソフィーが「カルシファーが千年も生きてハウルが心を取り戻しますように」というとその通りになる。実はこの手の「言った通りになる」魔法が使える魔法使いはダイアナ・ウィン・ジョーンズでは他にもいて、「魔法使いは誰だ」っていう話でもこのタイプの魔法使いが出てくるんですけど、そいつがめちゃくちゃアホだったせいで大変なことになるシーンがあって死ぬほど笑えるんでいつか読んでください。

戦争は宮﨑駿のオリジナル要素ですけど、私はあれ良かったと思います。戦争がないと物語的高まり無くなっちゃうんで。 ハウルに対する荒地の魔女の呪い、ハウルの心臓は奪われてしまうのか、という物語的緊張と、ソフィーとハウルの恋はどうなるのかという緊張、ソフィーは呪いが解けるのかという緊張があるんですけど全部規模が小さいんですよね。これに旗色が悪くなる激化していく戦争という外的な緊張が加わるわけです。これがあると個人的な葛藤の際に絵として周囲の世界がどんどん怖くなっていくように描けるわけで、これでより物語にスパイスが効くわけです。

ソフィーの年齢の話ですが、気持ちによって外見年齢が変わるんです。冒頭を思い出してください。ソフィーは外見に自信がない地味な少女でした。妹のレティーはモテて、お化粧も派手だったでしょう。二人姉妹で一人がすごく綺麗でモテまくりで外交的な性格で、一人が引っ込み事案で、という性格だったらどうしても必要以上に自分の外見を低く評価してしまいそうでしょう。ソフィーは最初からハウルに恋をしていますしハウルは派手で華やかなイケメンなんですよ。カンタとは違うタイプ。だからソフィーは余計自分の外見を気にして好きになってはいけない、好きだと知られてはいけない、若い娘になったらハウルとの関係は恋人になるか、なれなければ別れるしかない、でも老婆なら、そうしたら母親のような立場でずっとそばにいられるんです。だからソフィーはハウルマルクルと暮らして楽しくてどんどん溌剌としてそれに合わせて若くなるんですが、ハウルとの恋愛において臆病になるとどうしても老婆になってしまうんです。ソフィー自身が老婆であることに居心地の良さを感じている。だから呪いを解くことはもう彼女の目的ではなくなってるんですよ。正直最初からどうしても解きたいという感じではない。帽子屋で臆病な灰色の生活を送って、そのまま70年暮らすよりは、ハウルやみんなと1年間を幸せに過ごす方が彼女にとっては幸せでしょう。彼女、実際全然呪いを解こうとしないでしょう?解かなくていいんです、呪いなんか。あの凸凹家族といたいだけ。だから彼女自身の魔力も使って老婆でいるわけです。

この映画って3人の老いた魔女(サリマン先生、荒地の魔女、ソフィー)がハウルを取り合う話になってますね。ジブリだからいちいちいうことでもないんですけど絵が綺麗で音楽がいい。あとハウルの鳥になるシーンはどうしてもクラバート。